無犯罪証明書|高橋正朝 #13
『 無犯罪証明書 』そのものは、大夕張にはなんも( 懐かしい北海道弁 )関係ない。
『 まぼろし探偵 』のラジオ番組を、大夕張での子ども時代に聴き、『 まぼろし探偵 』の正体は誰かで、私が言った「 指紋を検べればいい 」という話から、私の指紋は警視庁に保管されているということに話が流れ、その経緯について、『 無犯罪証明書 』のことに言及しました。
それで、飯田雅人 さんもコメントに残してましたが、他の大夕張時代の複数の友人からも『 無犯罪証明書 』のことでいくつか質問がありました。
質問者のなかには、以前、帰国したときに、顔を合わせた人もいましたが、『 無犯罪証明書 』は、そのときの共通の話題でもなかったので、特段、言及することはなかったのです。
『 無犯罪証明書 』なるモノは、私も知らなかったことで、日常生活には出てこない。
私が読んだ範囲の推理小説や他の本でもお目にかからない名称だ。
もちろん、映画やテレビでも同様だ。
だが今は便利な時代なので、ネットで検索するとすぐに出てくる。ただ、その説明には、故意なのか、迂闊なのか、説明されていない部分がある。
その説明内容とは、質問者の質問との共通項でもあり、『 犯罪歴がある者は、どうなるのか ?』というものだった。
このことを質問した者は、犯罪歴があるのかネ ?
『 無犯罪証明書 』は、犯罪歴があると発行されない、というこでもないらしい。
これには実例がある。
私が、ある国でのあるプロジェクトで知り合った T という男がいた。もちろん日本人である。海外の建設工事で働く日本人は、そのプロジェクトで働くためだけに、派遣会社と契約して海外に派遣される、というのが普通にある。
彼の場合もそうだった。今でいうフリーランスである。
彼は、そのときが、初めての海外での仕事だった。私が所属していた会社とは別な会社からの派遣である。T は英語は話せないが、仕事に誠実で熱心だった。そのプロジェクトでの仕事が終わり、帰国することになったが、海外での仕事をしたい、ということで、私が当時所属していた会社を紹介した。
T は、3年ぐらい日本国内で原子力発電所でのメンテナンスの仕事をした後、S 国に行くことになった。S 国も、『 労働許可証 』を発行する条件の1つに、『 無犯罪証明書 』の提出を求めている。その T が、『 無犯罪証明書 』の手続きの段階で、私にある相談ごとを持ち込んた。
その相談ごとというのは、T は、『 前科 』があったのだ。だから、『 無犯罪証明書 』は発行されないと思い込んでいたようだった。
T が若いとき、ある夜に反社会的な男に絡まれ、逆にその男を叩きのめして大怪我を負わせた。結果、2カ月間ぐらい『 刑務所 』にいた、という経歴があったと言う。我が身を守るためとはいえ、『 過剰防衛 』ということで、『 傷害罪 』の経歴がついてしまった。
彼のその経歴は、私はそのとき初めて知ったが、「 たぶん、問題ないだろう 」と回答した。
実際、彼は『 無犯罪証明書 』を入手して、『 労働許可証 』を得て、何の問題もなく、S 国で働いた。彼の前科は問題にされなかったようだ。
私がリビアで働くにあたり、会社から、「『 無犯罪証明書 』を警視庁で発行してもらってください 」と、指示されたとき、すぐに行動し、警察にご厄介になったことは何もなかったので簡単に入手した。
『 無犯罪証明書 』とは、私には初めて聞いた名称だったので、会社のおエライさんに、もし犯罪歴があったらどうなるのか? と素朴に訊いたことがあった。
そのおエライさんが言うには、
「 頻繁な累犯はともかく、通常の刑事事件は問題視されることはない。相手国が問題視するのは、思想犯、学生運動過激派、カルト集団員などだ 」
上記の T は、『 傷害罪 』の前科があったが、何の問題もなく、『 労働許可証 』を得て S 国で働くことができたから、おエライさんが言ったことは事実だったようだ。
ただし、過去がそうだったからといって、現在も同じだとは限らないので、要注意 !!!
(2020年11月14日 記)
昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。
『無犯罪証明書』なる言葉、海外に出張の経験すらない自分にはネットで調べてもあまり関係のないものと思っていましたが、会社の「おエライさん」が説明された言葉を聞くと、妙に納得がいきます。