大夕張劇場で観たチャンバラ映画で、大川橋蔵が小判を噛んだ場面 | 高橋正朝 #212

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 パリではパラリンピックが開催されている最中だが、ちょっと前のオリンピックは、肝心なスポーツより、別なことでごちゃごちゃしたニュースが多かった。 

   

 度肝を抜かれた開催セレモニーにはじまり、柔道の変な判定、セーヌ川でのトライアスロンで、ベルギーチームやスイスチームの選手が体調不良に陥ったり、選手村での食事の不満、フランス人選手の部屋にはエアコンがあるが、他の国の選手の部屋にはエアコンが無いとか、男か?女か?なんての話題もでてきた。

    

 誰々が金メダルだ、銀メダルだ、銅メダルとかの話題より、ごちゃごちゃしたエピソードのほうが賑やかだった。

    

 そのメダルの話題も、メダルの表面のメッキが傷ついたりしたのを写真に撮ってネットで流した選手や、今回のパリオリンピックと、前回の東京オリンピックで金メダルを獲得した選手が、ちょっと前に獲ったパリオリンピックの金メダルがくすんだ光沢であるのに比し、東京オリンピックの金メダルがいまだに輝いているのを写真に撮ってネットにさらした。 

   

 果ては、フランスの新聞が、オリンピック開催中、どこの国の人間が、レストランでチップをどのくらい払ったか、な〜んて調査したのを報道した。 

   

 それらのニュースは、ネットですぐに流れたから、皆さんご存知のことと思います。

    

 ということで、ようやく首題の話し。

    

 私が、鹿島東小学校4年生か5年生のときだった。 千年町の大夕張劇場で、大川橋蔵主演のチャンバラ映画を観た。 遊び友だちは一緒ではなく、私1人だけで観た。

    

 その映画の題名は覚えていない。

    

 内容も覚えていないが、一場面だけが記憶にある。

    

 それは、町人姿の大川橋蔵が、小判を1枚手でつかみ、それを口に近づけ、歯で噛んだのである。 そして何か言ったのだが、そのセリフそのものは覚えていないが、おそらく、ニセ金だ、というような意味合いのセリフだったろう。 

   

 大川橋蔵は、その場面では町人姿だったが、実際は、武士だったという設定だったような気がする。 イイどもとニセ金作りのワルどもの戦いだ。

    

 映画館を出てから、歩きながら考えた。 大川橋蔵は、小判を噛んで、何で、ニセ金だとわかったんだろう?   

 このことは、誰にも訊かなかったので、22〜3歳ぐらいまで、小判の真贋を見きわめるのに、歯でかじってみる理由がわからなかった。

    

 金は錆びないし酸に溶けない、例外として、濃硝酸と濃塩酸の混合物である王水には溶ける、というのは、理科のテキストには載っていた。

    

 しかし、金属としては柔らかくて展性に富んでいるという記述は、当時の学校の理科のテキストにはなかったような記憶だ。

    

 すなわち、結論を言うと、ホンモノの金の小判であれば、かじったら歯形が小判につくわけだ。 歯形がつかなければ、その小判はニセ金というわけだ。

    

 かような事柄は、当時の小学生や中学生でも知っていた者もいたろうと思う。 しかし、まぁいたとしても少数だったろう。 

   

 金の手ごろな細工モノとしては、ネックレスが一般的だが、生活に目一杯の私の母親や叔母たちは、そういったモノは持っていなかった。 だから、私の大夕張時代には、金の実物にお目にかかったことはなかった。

  

 金の実物を見たのは、東京に出てから数年後の、22〜3歳ぐらいのときで、10 cmぐらいの正方形の箔で、非常に薄いものだった。 金を展げて延ばすわけだから、チリ紙より薄い。ところどころ穴が空いていた。 

   

 新宿の画材店で、箔が10枚で1 セットとして売られていた。 意外と安い価格だった。 

   

 それを買ったのは、箔画と呼ばれる工芸品の制作のためだった。

    

 そのときに、生まれて初めて金というか、金箔にさわり、箔画制作の過程で、金箔を重ねて穴を塞ぐ処置をしたとき、金というのは、ずいぶんと柔らかい金属なんだなァと実感した。

    

 オリンピックで金メダルを受賞した選手が、金を齧っている写真があったりしたが、メダルが本物の金だったら、簡単に歯形がつくらしい。 

    

 しかし、今日のオリンピックの金メダルは、純金ではないらしく、歯形はつかないようである。 

  

 ネットでチェックしたら、純金の金メダル授与は、1904年のセントルイスのオリンピックが最初で、1912年のストックホルムのオリンピックが最後だとでていた。

    

 オリンピックの金メダリストが、メダルを噛むのは、観衆に向けてのパフォーマンスだが、私が 10 代や 20 代ごろのオリンピックでは、金メダリストがメダルを噛むという報道写真は、見かけなかったような気がするが ••••••。   

 

 今回のパリオリンピックのメダルは、フランスの造幣局の作製だが、前回の東京オリンピックのメダルは日本の造幣局の作製だから、とんだ、オリンピックの場外種目になってしまった。

 

(2024年8月31日 記)


   

(筆者略歴)   

 昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。

メール宛先:taka-jp@outlook.com  (メール宛先変更になりました)

  


   

   

1件のコメント

  • 高橋さんの文章を読んで、自分が協和会館で見ていた映画の記憶を辿ってみた。
    大夕張で最後にみた映画の記憶は、なんだろうと・・・。
    『サンダ対ガイラ』という怪獣映画の格闘シーンがすぐに浮かんだ。
    画面にいっぱいに繰り広げられる格闘が迫力あった。
    昭和41年公開の映画となっている。
     
    この頃、協和会館で見にいったのは怪獣映画ばかりで、一般の映画の記憶は多分併映されていたものの記憶だ。
    この映画は、楽しみにしていたわりに自分的にはあまり面白くなかったような記憶がある。
     
    この映画が、自分にとって怪獣映画を好んで見ていた最後の記憶になる。
     
     

     

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