美鉄バス 大夕張最後の日|坂井郁夫
札幌線が廃止になってから、大夕張には2台のバスがありました。
平成9年(1997年)11月30日。当日は2台とも室内に装飾(1台は窓ガラスにサヨナラメッセージ)が施され、なんとなんと、全便2台連行で、しかも無料でした。
大夕張発イベントは、15:36発、夕張神社行で行われました。実は私達が貸し切ったバスは札幌線用だったバスで、久々の里帰りで、3台停留所に連ねて行われました。
車内には地元の方、ファンの方などが、多数乗車しいつにない賑わいでした。外には美鉄バス関係者や住人、ファンがこれまた沢山いました。
紙テープで、外と中が結ばれ、クラッカーが鳴り響くなか、やや遅れて出発しました。
16:36 あたりが暗くなり寂しくなった頃、私達のグループに見送られ、夕張神社発最後の大夕張行きが離れていきました。
19:15 清水沢発営業最終便は、再び3台連行になりました。
車内には結構、乗っていたのですが、外では見送る人もなく、42年間通い慣れた道を静かに走り始めました。
車内では写真を撮る人、ビデオを撮る人、様々でしたが、印象に残ったのは、この便本来のお客様がただひとり、途中停留所でさりげなく降りられたことでした。
振り返ることなく前へ進む後ろ姿に・・・・・
『湖畔』停留所を過ぎたあたりで、同社役員の挨拶がありました。42年間のお礼とやむ得ず撤退する心境を一言一言かみしめるように。
多数の人々が出迎える中、バスは無事大夕張へ到着しました。
2人の乗務員に、花束の贈呈が行われました。ひとりは奥様からご主人へ、ひとりはファンから・・・・
御礼の言葉に、安全運転で過ごせた安堵感と、これから走ることの出来ない無念さが、滲み出ていました。
みんなが声を掛け合い、別れを惜しむなか、ひとり去り、ふたり去り、私達も大夕張を後にしました。
今後数ヶ月間の間にすべての人が大夕張の地を去ると聞いています。
私は私なりに人が住んでいた、そしてバスが走っていた街を心にとどめておきたいと思います。
(平成9年(1997年)12月5日記)
以下は、一ヶ月前の平成9年10月13日の美鉄バス営業所訪問記