雪の結晶と雪印のロゴマーク |高橋正朝 #23

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 大夕張で生まれ育った人だけでなく、北海道生まれの人にとっては、雪印乳業のロゴマークには懐かしさを感じると思う。 北海道生まれの大企業だから、ということよりも、雪の結晶に懐かしさを感じるのだ。

   

 北海道生まれの企業ではあるが、本社は東京四谷にあり、東京在住者は知っていることだが、夜間、中央線•総武線に乗車していると、あの辺りにあるネオンでは、シャープとともに雪印マークのネオンが目立つ。

   

 雪は、水の三態のうちの個体だ、というのは、誰でも知っている。水の三態という用語を知らない幼年児でも、水は、蒸気になったり、雪になったり、氷になったりするのは、日常生活からも実感している。

  

 しかし、雪が、水分が結晶したモノというのは、日常生活では体感し得ない。

   

 学年誌や教科書に載っている雪の結晶の写真を見て、初めて、美しい雪の結晶の形を知った、というのが、当時の子どもたちの大半だったろう。いや、当時の大人もそうだったろうと思う。それどころか、現在の青少年も大人も同様だと思う。雪の結晶を、直接観察した者は、日本の人口比としては少数だろう。

   

 現在でも、個人で顕微鏡を所持している少年少女は、ミクロの世界に興味を持っている者だけだろうと思う。

   

 ましては、我々の年代がすごした大夕張での少年時代、日本がまだ貧しい状況だったことも相まって、顕微鏡を持っている者は周りにはいなかった。

   

 しかし、虫眼鏡を持っている者はいた。たいてい、お祭りやお盆のときに貰った乏しい小遣いのなかから買った。お正月に貰う小遣いで虫眼鏡を買う者は、まず、いなかったと思う。

   

 その理由は、虫眼鏡の利用目的である。 3つある。

 1つ目は、対象物である草木や昆虫を拡大して見て、単純に喜んでいたケース。

 2つ目は、太陽光を収斂させて、紙を着火させる試み。

 3つ目は、望遠鏡の作成である。   

 

 上記のいずれも、虫眼鏡を利用する目的としては、雪が降る時期には、行動意欲が湧かない。

   

 鹿島東小学校3年生の春先、同級生の男子生徒が虫眼鏡を家から持ってきて、休み時間、紙にレンズをかざし、焦点がこげて煙がでてくるのを、私を含めた数人に見せた。

   

 私は、それを自分自身で試したく、お祭りのとき、貰った小遣いで、小さな虫眼鏡を買った。家に帰ってから早速試してみたが、白い紙は、焦点がこげてきて煙はでてくるのだが、着火はしない。数回やってみたが、いずれも着火しなかった。黒い紙でも試してみたが、煙はでるものの、やはり着火しなかった。1時間弱ぐらい繰り返していたが、着火はあきらめた。 と言うか、早い話し、飽きたのである。

   

 同じ年の寒い冬のある日、今頃の時期だろうか、窓から冬景色を眺めていたとき、フッと窓ガラスに注意を向けた。

   

 雪は、ちらりほらリと降っているだけだった。

 外はシバレテおり、出窓の窓ガラスには、雪はそれほど張りついでいない。窓ガラスを嵌めている格子に少し積もっている雪を見ていたら、なんと、雪の結晶が見えたのだ。

 大きさは1ミリから3ミリぐらいの間ぐらい。 結晶に見えたモノは、そのとき、17個あった。 出窓の上部はチェックしなかったので、おそらく、そのときの窓ガラスに張りついでいた結晶の数は、30個以上はあったにちがいない。

     

 フッと疑問が生じたのは、雪の結晶は、虫眼鏡や顕微鏡でなければ観察できないハズ、ということだった。

 それで、お祭りの小遣いで買った虫眼鏡を取りだし、雪の結晶と思しきモノを見てみたが、まさしく、雪の結晶だった。飽きっぽい私にしてはめずらしく、大夕張を離れるまで、雪の結晶を断続的に眺めた回数は、数百回にはのぼるだろう。

   

 飽きもせずに雪の結晶を眺めたのは、その美しさに魅了されたからだ。 そのためもあって、雪印のロゴマークに懐かしさを感じるのだと思う。

   

 この、雪の結晶が、窓ガラスに張り付いているのを見たのは、大夕張在住者では、結構いたろうと思う。   

雪の結晶は肉眼で見えるのか、ということだが、ネットで、『 雪の結晶の肉眼観察 』で検索すればでてきます。   

 シバレルなか、雪がガラスに張りついていたのがラッキーだった。 ガラスが、光を透過するモノでなかったら、雪の結晶を肉眼でも観察できる、ということは知らないままだったろう。

 ヒマな人は、ついでに、『 雪華図説 』も検索してみてください。 古河藩主、土井利位 が著した雪の結晶の顕微鏡観察の本です。

   

 かなり以前、『 芸術新潮 』だったと思うが、その本の解説を読んだ記憶がある。『 雪博士 』の異名をとる、中谷宇吉郎 も、『 雪華図説 』を解説した書があった。   

 変わったところでは、細野不二彦 が、マンガ、『 ギャラリーフェイク 文庫版 007 』のなか、『 湯之華と雪之 華』で、雪の結晶デザイン云々を、うまく話しの中に取り込んでいたのは、マンガ好きのアナタなら、ご存知でしょう。ただ、このマンガの参考資料として挙げているのは、高橋喜平•高橋雪人著『 雪の文様 』北海道大学図書刊行会、となっている。

    

 この『 雪の文様 』は読んでいないが、ネットでチェックしてみたら、やはり、『 雪華図説 』の解説が含まれているようである。マンガの内容では、江戸時代、すでに雪の結晶のことは知られている、というのがキーになっているので、日本の、雪の研究では、『 雪華図説 』は、重要な文献のようである。

  

 蛇足だが、このときのマンガの導入部を、とても気に入っている。  

 

 


(筆者略歴)

 昭和23年11月大夕張、明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。

 以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。



1件のコメント

  • 寒さの厳しい大夕張では、特に寒い雪の降る日、屋外で黒い手袋におちた雪の一片によーく、目をこらしてみると、雪の一粒一粒がよく見えた。
    運がよければ結晶が崩れていない形の整った雪をみることができたように思う。
    虫眼鏡も書かれている通り、その三つ、すべてやってみた。
    火をつける話は、黒い紙がなくて、クレヨンで一生懸命にぬってやってみたりしたけど、ダメだった。
    結局、テレビの画面を大きく見るためのレンズ?プラスチック板のようなものを虫眼鏡がわりにやってみたりしたけど、白い煙が勢いよくでるところまではいって、けっきょく諦めた。

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