夕鉄バスの記憶|乗田功一
2021-10-15
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子供の頃、冒険心を起こし親に内緒で一人で、夕張へ行ったことがあります。
当然、お金もないので、清水沢までは汽車で(当時、回数券が会社より支給されていたのでタダで乗車できました)行き、そこからバスに乗り換え夕張へ。
適当に町をブラついたあと、帰りは逆のコースをとるべくバスへ乗車しました。
ところが、車内はたいへんな混み様で、汽車に乗り換えるはずの清水沢で、下車できません。当時、ワンマンではなく車掌さんがいましたが、大きな声で「降りま~す」と言えば降りられたのでしょうが、内気な私はそれもできず、バスは清水沢を発車してしまいました。
そのバスは大夕張行きだったのですが、清水沢までのお金しか持っていなかった私は、満員の乗客をかきわけ車掌さんの所へ行き、正直に説明しました。
車掌さんは
「ダメじゃないの!」
と私を叱りましたが
「いいから乗ってなさい」
と、大夕張まで乗せてくれました。
その時の少し恐い車掌さんと、今では考えられないあの満員の乗客を乗せたバス。
それが私の記憶にある「夕鉄バス」です。
また、三菱バスと違い、夕鉄バスは空気バネを使っているので、妙にフワフワした乗り心地であると言われていて、車酔いしやすかったように思います。
(1998年04月05日 記)