夕鉄バスの記憶|乗田功一

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 子供の頃、冒険心を起こし親に内緒で一人で、夕張へ行ったことがあります。

 

 当然、お金もないので、清水沢までは汽車で(当時、回数券が会社より支給されていたのでタダで乗車できました)行き、そこからバスに乗り換え夕張へ。

 

 
 適当に町をブラついたあと、帰りは逆のコースをとるべくバスへ乗車しました。

 

 ところが、車内はたいへんな混み様で、汽車に乗り換えるはずの清水沢で、下車できません。当時、ワンマンではなく車掌さんがいましたが、大きな声で「降りま~す」と言えば降りられたのでしょうが、内気な私はそれもできず、バスは清水沢を発車してしまいました。

 

 
 そのバスは大夕張行きだったのですが、清水沢までのお金しか持っていなかった私は、満員の乗客をかきわけ車掌さんの所へ行き、正直に説明しました。

 

 
 車掌さんは

 

「ダメじゃないの!」

 

と私を叱りましたが

 

「いいから乗ってなさい」

と、大夕張まで乗せてくれました。

 

その時の少し恐い車掌さんと、今では考えられないあの満員の乗客を乗せたバス。

 

それが私の記憶にある「夕鉄バス」です。

 

また、三菱バスと違い、夕鉄バスは空気バネを使っているので、妙にフワフワした乗り心地であると言われていて、車酔いしやすかったように思います。

(1998年04月05日 記)


思い出ばなし

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