東京にきてから、この〘 もちょこい 〙〘 もちょこす 〙は、比較的早く忘れた北海道弁である。

　この〘 もちょこい 〙〘 もちょこす 〙は、くすぐったり、くすぐられたりしたときに発する言葉なのは、皆さんご存知のとおり。

　ま、たいてい、相手とふざけ合って、くすぐったりくすぐられたりしたときに用いる言葉だった。

　素足で、畳や床に足を投げだしたときなど、足裏を〘 もちょこす 〙のは、せいぜい10歳ぐらいまでだった。

　イヌやネコに、顔を舐められたりしたときにも、出てきた言葉だ。

　ネコじゃらしのようなもので、突然、後ろから、首筋をなぞられたときにも出てくる言葉だが、このときは、首筋が〘 もちょこい 〙感覚と、背筋がぞぞ〜っという感覚も混じった。　他の人はどうだったろうか？　

　北海道弁は、東北弁をルーツにしたものが多いが、この〘 もちょこい 〙をネットでチェックしてみたら、北海道道南や青森県の方言と書かれていたものがあった。　もう少し限定的に書いたものには、下北弁としたものがあった。

　南部弁と書いたものがあったが、南部藩は、現在の岩手県のかなり広範囲な部分から下北半島も領有していたから、下北弁も包含することになる。

　いずれにしても、方言の〘 もちょこい 〙のルーツは、南部藩のエリアのようである。　

　秋田県の言及がないようだが、そこでは、この〘 もちょこい 〙は、一般的には使われなかった方言なのだろうか？　

　この〘 もちょこい 〙の方言を、小説の中で読んだのは、小林多喜二の蟹工船である。

　この稿を見ている人のなかには、読んだ人もいるだろうと思う。　私が最初に読んだときは、20代半ばのころだった。　

　今から十数年前、新潮文庫が、蟹工船を、力をいれて売っていた時期がある。　念のため、ネットでチェックしたら、2008年に50万部売ったようだ。　発行部数か実売数かまではわからないが、こういう小説がこれだけ売れるのは珍しい。

　北海道弁の〘 もちょこい 〙も含めて、内容はすべて忘れていたこともあり、バンコクの古本屋で見つけたときは、すぐに買って読んだ。

　小説の蟹工船は、あくまで小説のなかの出来事として書かれているが、三菱の名前がでていたり、作者の小林多喜二自身が、官憲に拷問されて殺害されているのと相まって、事実に近い状況だったろうと思われている。

　この小説を読んだあなたは、どういう感想を持ちましたか？　　　

（2021年10月23日　記）

（筆者略歴）

　昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。