モディリアーニの『 腕を広げて横たわる裸婦 』|高橋正朝 #77

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例によって、飯田さんが編集した明石町の住宅地図をコピペ。     

昭和43年明石町住宅地図

 この地図をピンチアウトすると、高島ラーメン店の右側の家に、渡辺 と書かれているのが見える。 

   

 渡辺 さんは、大夕張鉄道の保線の仕事をしていた。

 キミコ さんという一人娘がいた。

 私のすぐ下の妹の 百合子 と同じ学年か、もしかすると、もう1学年下だったかもしれない。

    

 周りの大人や我々子どもは、キミ ちゃんと呼んでいた。

 キミ ちゃんは、たま〜に我が家に遊びにくることがあった。

   

 私が鹿島中学校の3年生か、夕張工業高校の1年生かハッキリ覚えていないが、そのキミちゃんが、日中、我が家に遊びにきていて、妹たちとオシャベリしていた。日中だったから、学校が休みの日だ。

    

 オシャベリが止んだので、私が背後を振り返ったら、キミ ちゃんは、本を熱心に見ていた。

 その横には、末っ子の 綾子 が座っていた。

 私は、てっきり、キミちゃんが見ていたのはマンガだとばかり思っていた。

    

 私は、テレビを見ながらの勉強に戻った。

    

 そのうち、綾子が、

 

「 えへへっ 」

 と笑った。

    

本当に「えへへっ」と発したのだ。

    

「 これは、絵だからおかしくないのよ 」

と、キミちゃん。

    

 私はイスに座っていたから、振り返って2人を見た。

 ストーブの反対側にある壁に寄りかかった2人が見ていたのは、当時、平凡社が発行していた絵画シリーズのうち、〘 エコール・ド・パリ 〙の巻だった。

    

 2人が見ていたページは、モディリアーニの〘 腕を広げて横たわる裸婦 〙だった。

 ヘアーが描かれていたので、綾子は、「 えへへっ 」と発したのだ。

    

 キミちゃんは、綾子より4歳ぐらい年上だから、美術や芸術の輪郭はわかるのだ。

    

 私は、中学2年生の正月のこづかいで、平凡社の絵画シリーズの、〘 新印象派 〙の巻を買ったのが最初で、こづかいをためながら、少しずつ7〜8巻ぐらい買った。

    

 キミ ちゃんも、芸術に興味を持ち始めた頃だったようで、それで、上記の本を開いたのだろう。

(2022年2月5日 記)


    

(筆者略歴)

 昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。


1件のコメント

  • 裸婦の姿、子どもの頃、親の前でみる勇気はなかった。
    見てはいけないもののような気がしていた。
    だから父が購入した美術本にも載っていたが、そんなところは慌てて頁をとばした。
    あとで誰もいないとき眺めていた。
    おおっぴらにみることができるようになったのは、もう少し大きくなってからだった。
    時を経て、その本は我が家の本棚に残った。
     
     
    昭和39年発行の「講談社版世界美術全集全25巻」総原色版 定価550円(予約特価450円)
     
    父が駅前の谷野書店に予約して購入していた。

    美術全集とはいうが、コンパクトな大きさで、絵を見るときの手引きとして今も時折手に取ることがある。

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