色付きの夢 | 高橋正朝 #136
色付きの夢を見たのは、鹿島東小学校4年生の初夏のころだったと思う。
1ヶ月ぐらいの間に2回見た。 それ以前も以後も色付きの夢は見ていない。
内容は2回ともほぼ同じである。 背中にマントをはおった私が空を飛んでいるのだ。
太陽は黄色。 空は青色。 マントは赤色。 身体の色は明るいネズミ色。 真下に見えるのは緑の草原である。
光の三原色とか、色の三原色とかいう言葉はまったく知らなかったが、見た夢のなかの色の種類は単純なものに分解されている。 混色はでてこない。
問題は、夢のなかにでてくる色には彩度がないことである。
全部くすんだ色なのだ。
夢のなかの自分は、色を、なんとか自然な色あいにしたいと願っているのだが、そうはならなかった。 くすんだ色のなかでも、草色が印象的だった。
マントをはおって空を飛んでいるのは、当時の、映画、テレビ、マンガの、典型的な空飛ぶヒーローの姿だ。
夢のなかの私は、両手を前に差しだし、地面に平行して真っ直ぐに空中を飛んでいる。
地面に平行して飛んでいるつもりでも、そのうち身体が、少しずつ少しずつ地面に近づいてくるのだ。 このままだと、地面に接触してしまうというか、衝突してしまう。
それで、夢のなかの私は、胸を上方に思い切り反らす。
そうすると、身体が上方に向かうのだ。 そのときの両手は前方に差し出されてなく、体側にピタリとくっつけている。
たとえ、空中であっても、上半身を反らしたままではキツいので、身体を伏せた状態にし、地面に平行して飛ぶ。 そのままだと、やがて、また地面に近づいてくる。 そして、上半身を反らせて地面から離れる。 それらの動作を夢のなかで繰り返した。
重さのあるものはやがて重力に引っ張られて落下するし、直線的な物体の前方が上向きになって直進すれば、その物体は上方に向かうのは、当たり前だなぁと、これも夢のなかで思った。
直線という言葉はともかく、物体とか直進という名詞は知らなかったが、要するに、そういうことを思ったわけだ。
目がさめたら、汗びっしょりだった。
2回目も同様だった。
同級生の明石町に住んでいた苗字の U は、総天然色の夢を見たことがあったようである。
この稿を書いているうち、もう1人の男児のことも思い出した。 苗字が T という男児で、たしか、宝町に住んでいたはずだ。
色付きの夢を見る人というのは、どのくらいの割合でいるのだろうか?
(2023年3月18日 記)
昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。
子どもの頃の夢は、空を飛ぶ夢とか、正義の味方になってワルモノをやっつける夢とか、反対に怖いモノに追われて追いかけられてついに・・・そこで眼が覚める夢とか・・。
小学校から中学校にかけて、どんな夢を見たとか、その夢にどんな意味があるのかとか、けっこう話題になった。
年齢を重ねて行くと、現実と同じような光景が広がる夢を見ることが多くなった。
現実にはない見たことがない風景でも、夢の中では現実という感じ方。
だから、夢の中では、夢とは思っていない。
夢の途中で、これは『夢のなかにいるのではないか』と気づくこともある。
でも、起きて「ああ夢なんだ」と思うことの方が多い。
カラーか、白黒かと判断したことはなかったが、あらためて思うと、
これはきっと色つきの夢なんだろう。