「鹿島」について|高橋博美

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 北海道の地名はアイヌ語から転化したものが多い。

 
 夕張もユーパロ(鉱泉の湧き出るところ)から来たものだが、細かな地名となると、ゆかりのある本州の地名などが当然多くなる。

 
 鹿島は夕張の芦別側の一番奥にある地名で普通、大夕張と呼ばれた地区だが、住所的にはどこにも大夕張は出てこない。

 
 正式名称である鹿島といってもピンとこない人の方が多い。

 
 夕張岳の麓で、シューパロ湖の水辺にある地域だ。

 

 夕張には鹿のつく地名が他に鹿ノ谷があるが、これは単純に昔、鹿が多く生息していたとの話であり、鹿島とは意味が違う。

 
 鹿島といえば茨城の鹿島市で鹿島神社などが想い浮かぶが、関連はあるのだろうか。

 

 由来について考えて見たい。

 
 まずこの地に最初に来た和人は誰でいつ頃であろうか。

 
 言える事は農業関係の人ではありえない、まったく耕地に適した場所は少なく、気候も不適である。石炭で来たのでもない、石炭は後からである。

 
 地名にもそれが現れている。

 
 大夕張とは明治39年頃あたりから使われはじめているがそれは鉱山会社の名称からである。

 
 では何かというと、それは砂金である。

 
 白金(プラチナ)も採れた。

 
 その名残りで夕張岳の麓には白金の沢というのも在り、実際に昔の採取跡が見られる。

 
 記録的には明治7年(1874)、アメリカ人の鉱山地質学者が炭坑地質を発見したことになっているが、最初に居着いたのは砂金採取の者であり時期的には1600年頃からだと思われる。

 

 松前藩の記録では寛永12年(1635)、二代目藩主、松前公広の命を受けた家臣がアイヌ人数百人に数年間にわたり夕張岳を中心に砂金の採取をさせたとある。

 
 当時、蝦夷地は徳川家康よりその30年ほど前に松前藩が所領を安堵され、その時期、蝦夷地の鉱山や漁場の開発が盛んであった。

 
 当時は石炭の需要はさほどなく、鉱山開発の目的は、金と銀であった。

 
 石炭はその副産物であったが、その後世界的な産業革命の流れから石炭が主役になり、夕張自体が大きく発展するのは明治に入ってからである。

 
 松前藩のことだが、この藩は江戸期、唯一の無石で大名格(一万石)になった藩で米ではなく、主要産物で石高が計られた。

 
 幕末には三万石になっているので実態は本州の同格の藩よりは豊かであった。

 
 植民地主義的な抑圧と搾取でもって運営していたが、その後、一時、江戸幕府が直接蝦夷地経営を目指した時期があり、転封のさたもあったが、結果的に幕府は大きな負債を抱え、すぐに松前藩に所領を戻す事になり明治までつづく。

 
 夕張は松前から離れすぎ、藩の主要な漁場とも遠く、運上場所も設けてなかったので殆ど管理などしていなかった。

 
 逆にいえば、当時の鉱山開発者(山師)にとっては当てれば濡れ手に粟の場所だった。

 
 当時の山師は江戸はもちろんだが甲斐などに多くいたが、技術的には砂金採取ではなく鉱山採掘で、鹿島に来た人はまともな藩からの人たちではない。

 
 後で松前藩が乗り出すのはそれらの人達から情報を得たためであり鹿島という名はその時点で存在していた。

 

 

 では鹿島というのはどこの場所をさしていたのだろうか。

 

 
 砂金は川で採取するのだが今でも川には鹿島という名称はない。

 
 採取場所はもっと小さい沢でなければならなく鹿島はもともとは鹿島沢鹿島の沢から来ていると思われる。

 

 
 調べて見ると大正12年(1925)鹿島沢採炭坑道開鑿という記事が見られる。

 
 やはり鹿島は沢の名前から来ている。

 
 松前藩が砂金採取する前にその沢にいた人は鹿島という人なのか、それとも鹿島に由来する関係の人なのだろうか。

 
 また、松前藩でアイヌ人を指揮した家臣が鹿島氏なのか・・・と書き進んでいると、重要なことが頭に浮かんだ。

  

 

 その疑問とは「だからどうした」という深い疑問である。

 
 この考えが頭に浮かんだ時点で私はなぜか、大阪漫才かしまし娘を思い出し「よしえでーーす」と口走り、布団に入るのであった。

 

 (2001年8月26日 記)

 


随想

1件のコメント

  • 22年振りの再読。
    オチで大受けでした。

    「読む人を楽しませてくれること」・・・これが自分の『22年後の答え』です。

    だから「やめられない、とまらない、」

     

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