フォークダンスの思い出|Mask-man
フォークダンスの思い出 【Mask-man】
鹿島中学校3年の時、一方的に気になっていた女の子がいて、一緒に踊れることを密かに期待していた子がいました。
彼女は、芦別からの転校生でした。クラスは同じでしたが、まともにおしゃべりをしたことはありませんでした。彼女は、おとなしく、いつも2、3人の友人たちと教室の中で話しをしているというタイプでした。
それをただ、遠くから見ているといった自分です。でも、修学旅行の青函連絡船の上で彼女がたちが写真を撮っているときに、ふざけたふりをして親しい友人とともにそこに割り込み、一緒に映り込んだことがありました。
普段、慎重な私が、なぜかその時は、そんな大胆な行動をとってしまいました。修学旅行の気持ちの高まりの中だったからでしょう。
弘前の旅館で、一泊しました。その夜、部屋の外の廊下ではしゃぐ女の子たちの声の中に、彼女の声を聞きました。すぐに部屋をとび出していきたい気持ちと裏腹に、私は何をするでもなく、部屋の中にいたのです。
秋になりました。中学校では学校祭の準備が始まり、各自が係の仕事にわかれて準備を進めます。教室では展示やバザーで楽しみます。彼女は頭巾にエプロン姿がかわいらしく、給仕で一生懸命働いていました。それを遠目に見ているだけでした。
そんな学校祭最後の日のファイヤーストーム。秋の日暮れは早く、学校林の向こうに陽が傾き、学校のグラウンドは黄金色に輝きます。
だんだん気持ちも高揚してきます。彼女と踊りたい。
曲が始まり、長い2列の輪が交互に交差しながら、だんだん彼女の姿が近づいてきました、胸が高鳴り、鼓動が聞こえてきました。
心臓は破裂しそうな程、ドキドキ、顔が火照ります。
そのとき、なんと曲が中断!「ああっ!」「えーっ」の声、「えっ、おわったの?」
「もう一度かけます」の実行委員の女子の声で放送が流れ、全体にざわめきが広がった後、曲が始まり、ふたたび踊り出しました。
無事、彼女と、踊ることができました。
彼女の柔らかくて、きゃしゃな手がおもったより、冷たく意外でした。彼女の顔はみることすらできませんでした。あっという間の時間でした。でも彼女の手の感覚はずうっと残っていました。
その後、高校受験を控えた、中学3年の冬はあっと言う間に過ぎて行きました。
それから五十年。卒業後彼女と再び出会うこともありませんでした。