大夕張つれづれ■砂漠のハエ■|高橋正朝 #24
先日、 沢木耕太郎 の「 彼らの流儀 」という新潮文庫を読みました。
あとがきを読むと、 朝日新聞での連載コラムだったようです。
そのなかで、「 砂漠の雪 」というタイトルがあり、 主人公のサウジアラビアでの生活の描写があり、満天の星の下でのギターを弾く場面があり、続けて、ハエの大群が襲いかかってくる場面がありました。
口と眼に殺到してきた、 と書かれていました。
ここで、疑問に感じたのは、夜間、外でハエの大群が活動するのかな?という疑問です。
陸上動物の90%以上は、夜は眠るものと思うのだが、子供のとき、大夕張時代、昼間はうるさいハエも、夜は天井に泊まったりして、ハエも夜は眠るのだなあ、と思ったことがありました。
口と眼にハエが寄ってくるのは、砂漠に住んでいた当時、私も同僚も経験していますが、殺到するという表現ほどではない。
サハラ砂漠に到着したとき、私が眼鏡をかけているにもかかわらず、ハエが眼をめがけて飛んできたことがありました。眼鏡と顔の隙間から、眼を狙ってくるるわけです。
眼鏡をかけている人は例外なく、 2~3回はこのようなめにあう。
しかし、それ以降は、ハエが眼に飛び込まないよう、無意識に体の角度などをかえて防御しているらしく、1~2週間もすれば慌てふためくことはなくなる。
砂漠の明け方は、涼しく気持ちがいい。
砂漠地帯に入った翌朝、局舎の外で思いっきり両手を広げて深呼吸したら、ハエが、胃に飛び込んできた。
口に飛び込んできた、という表現ではなく、胃に飛び込んできた、という表現のほうが適当だ。2~3回、ぺっぺっと痰を吐き出すようにしたけど、どうにもならない。
そのことは同僚には何も言わなかった。
翌朝、昨日と同じように、「 きのうは偶然にハエが胃の中にとびこんできたなあ・・・・・・ 」と思いながら、外に出て両手を広げて大きく深呼吸したら、またもやハエが胃に飛び込んできた。
二日連続でこういう目にあったので同僚に言ったら笑われた。彼らも同じ目にあったらしい。
ただし、各自1回だけだったらしいけど・・・・・・。
ハエとしては、 必死で水分を狙っているらしい。それがハッキリわかったのは、ポンプの周りに小さな囲いを、石とモルタルで作った途端、10分もしないうち、数百匹ぐらいのハエがたかったことでした。
モルタルや石を食べるわけではない。水分に飢えているのです。
このときは、文字通り、ハエが殺到したと言っていい。
子供のころ、アフリカの子供たちが映画に出てくる場面では、ハエが子供にたかっているところを何回か見たことがありました。
不衛生だから、ハエがたかってくるのだろう、と思っていましたが、実際はそうではなく、皮膚の表面の水分を狙ってハエが寄ってきていたのが、現地に行って初めて知ったことでした。
今は、砂漠を旅行する人も多くなり、紀行文で、そういうことを書いてある本も数冊読みましたが、私らの子供の頃にはわからないことでした。
高橋 正朝 ( たかはし まさとも ) 2013/05/12 _ 13:07:05
昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。