大夕張つれづれ■オーバーブッキング(前編)■|高橋正朝 #67
米国で、ユナイテッド航空がオーバーブッキングして、男性医師を引きずり降ろした映像がネットで出回り、日本の新聞でも報道された。かなり物議を醸しているようだ。
オーバーブッキングに関しては、私も経験がある。航空会社は、日本航空である。もう20年ぐらい前だが、マレーシアのクアラルンプルの国際空港でのできごとだった。
クアラルンプルには、仕事で4泊した。マレーシア製の受電設備の試験の立ち合いである。マレーシアの重電設備の会社で、その製品を中国の大連で、使用するためである。
もう20年ぐらい前の話であるが、今考えると日本はバブルの坂の谷を目指して転げている最中であるが、当時は、まだバブルの真っ最中の感じがしていた。
日本の重電会社に変電設備を注文した場合、納期に5年かかるといわれた時期である。
世界中で知られた日本の精密機器メーカーが、大連に工場を造ることになったが、日本製の受電設備を使用するとなると、工場引き渡しに間に合わない。ということで、マレーシア製を使うことになった。
そのメーカーの1番重要な主開閉器は日本製である。主開閉器の日本メーカーと、そのマレーシアの重電メーカーは、技術提携はしていないが、日本メーカーの技術者が、数カ月に一度、技術指導にくる、ということで、そのマレーシア製品を使うことになった。
試験は何ら問題はなく終了した。そして帰国するために、クアラルンプル国際空港に行ったときに事態が出来した。
今まで行ったことのない空港には、その空港を見物をしたいのと、市内から空港に行くまでに、タクシーのエンストや事故などを考え、出発の4時間以上の余裕を持って行くことにしている。
そのときは、出発時刻の5時間ぐらい前に到着し、1時間ぐらい空港内部を見て、まだチケットカウンターが開くには4時間ぐらいあるが、カウンターの前に立っていた。私1人だけである。それから10分ぐらいして、私と同年配の日本人の男性が後ろに並んだ。
彼も、私と同様な考えで空港に早々と到着したわけだ。
全くの偶然だが、マレーシアの重電メーカーが使用している日本製の主開閉器のメーカーの社員だった。ただし、専門は全く別で、別な物件でマレーシアに出張しに来たということだった。
2人で立ち話していたが、その間誰も来ない。そりゃそうだ。チケットカウンターが開くまで時間がずいぶんとある。10分ぐらいしたら、JALの身分証を胸に付けた若い日本人男性がやってきた。
「オーバーブッキングが発生しました。まことに申し訳ありませんがシンガポール航空でシンガポールに行っていただき、そこで1泊していただきませんか?」と言うではないか。
翌日は土曜日であったので、私は即座に了解した。私の後ろの日本人男性も同様に、シンガポール行きを了解した。オーバーブッキングは2人だけだった。
JALは、搭乗手続き前にオーバーブッキングが判ったので、チケットカウンターの最前に並んでいた私と次の男性に交渉したのだろう。私たちが拒否したら、多分次に並んでいる人たちと交渉したろうと思う。もっとも、その時点でも私たち2人の後ろには誰も並んでいなかったが。
今回のユナイテッド航空の件は、既に乗った人を引きずり降ろしたのだからタチが悪い。今の時代、たいていの人はスマホやデジカメを持っているから、こういうことは撮影されて、すぐにネットで拡散してしまう。アメリカではユナイテッド航空に対し、相当なブーイングが出ているようだ。
こんな事件があれば、ユナイテッド航空の過去の同様な事件や、他のネガティブなことまでほじくり返されて、更なる拡散と相成る。
(「後編」につづく)
高橋 正朝 ( たかはし まさとも ) 2017/04/16 _ 13:18:00
昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住