食憶(その5 木箱の中身)|長谷川潤一

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 大夕張の暮れは、すっぽりと雪の冬でした。

 この時期ならではな物を、ちょっこといきたいと思います。

 まず「リンゴ」。

 幌掛けのチェーンを撒いた小型トラックに拡声器がちょこんと載っかっていて、「青森から来たさ」という眼鏡のおじさんが、お国訛りで売って歩いてました。

 あの長方形の板作りのリンゴ箱は、まだ産地では見ますね。

 昔はどこの家にも、一つや二つは物置にあり、何か入れて使ってませんでした?

 横面の正方形の板面のとこには、おおざっぱな型塗りでリンゴの種類がプリントされていて「国光」「紅玉」「印度」「ゴールデン」「スターキング」などがありました。

 籾殻の中にリンゴが埋まっていて、まるで宝探しの気分で、赤いリンゴを掘り当てました。

 玉数が少なくなると、チクチクするばっかりの籾殻の中を、手探りでリンゴを掘り出すのは、ちょっと大変でした。

  

 そして「みかん」。

 木箱にキッチリと詰め込んで入っていて、釘抜きなどで板をめっくて開けました。

 油紙やセロハン紙を捲ると、「特選○○高級ミカン」とかなんとか書いた産地を誇る金ピカの短冊紙などが入っていました。

 何個か見事に黴が生えていて、緑の粉吹き状態だったりしてましたね。

 そこから傷を付けずに強引に出したミカンは、なんと美しい四角形のミカン!

 珍味?でしたねー。そのあと、リンゴやミカンの空き箱は、子供たちのパッチの台、冬休みの工作用、古いスキー板を付けて、橇遊びなどなどにと使われました。

 大夕張からの引っ越しの時に使って、実家の物置でひょっとしたらまだ、「国光」の箱使っていませんか?

(1999年12月17日)


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