氷の下面の曲線模様 | 高橋正朝 #26
我々団塊の世代の少年時代、晩秋のころ、すなわち、10月になると、日中、道路に溜まっていた水が夜の間に氷になり、朝、その氷をバリバリと音をたてて踏みつけながら、鹿島東小学校に登校した。
氷ができる、とはいっても、午後には融けてしまい、翌朝になったら、また氷ができている ••••••。
その時期、道路にできた氷は、溜り水が同一同質に氷になったわけではなく、出来上がった氷の表面は、ほぼ平らだが、その下、すなわち、土に面したところは、何やら、面白い曲線の溝ができていた。これば、大夕張の住人だった者は皆知っている。
この、面白い曲線模様の溝がある氷を見て、よせばいいのに、手袋をしたまま掴むのだ。
それは私だ。
毛糸の手袋だから直ぐ濡れる。ホント、アホだったよなぁ〜。
でも、50人いれば、10人は、間違いなく、このことをやっていた。10人というのは控えめな数字で、もう少しいたかもしれない。
50人というのは、当時の1学級の生徒数だ。女子生徒は、道路に張った氷をバリバリと踏んづけたりしていたのを、私は見た記憶がない。
マ、団塊の世代だから、我々と同様なことをしていた女子生徒もいたかもしれないが ••••••。
女子生徒といっても、小学3年生だから子どもなのだが、意識していたか無意識かは分からないが、我々の行動を、子どもっぽい、と思っていたフシがあった。
この氷の下面の曲線模様の溝を、どういうわけか、私は甚く気に入り、飽くことなく見ていたものだった。
氷が、午後に融ける時期は、寒さはまだ本格的ではない。やがて、初雪が降り、しかし、まだ根雪が降らないころ、明石町駅の直ぐ横、開拓に行く方向にあった小川にできた氷に興味が向いた。
きっと、その氷は厚く、曲線模様の凸凹は深くて面白いに違いない、と思った私は、小川に張った氷を踏みつけて割った。水深は元々浅かったうえ、水面の水は凍ったので、氷と流水の間は隙間ができていた。
割った氷を拾って、例の曲線模様を眺めている最中、バランスをくずして足を滑らせてしまい、お尻は岸にくっついていた氷の上に落ちたが、ヒザから下が水に浸かり、ずぶ濡れになってしまった。
氷が張った小川だから、0℃の水だもんなぁ ••••••。
その場所から明石町番外地の我が家まで、5分ぐらいのものだが、足がものすごく冷たかった。さいわいに、無風で陽が出ていたから、少しは助かったが ••••••。
更に幸運だったのは、母親が買い物に出ていて、家にいなかったことで、怒られずにすんだことだ。それ以後、小川に張った氷を割りに行くことはしなくなった。
ダムができて、シューパロ川がシューパロ湖になり、ワカサギが釣れるようになったとき、近所の年上の少年に、真冬、1月から今頃の時期、ワカサギ釣りに何回か誘われたことがあったが、私は、絶対に首を縦に振らなかった。
(2021年2月13日 記)
初冬の霜が降りるような寒い朝、土の道路の窪みにたまった水の表面に張った薄い氷。
毛糸の手袋で指先にしみこんだ水を感じながら氷を剥ぎ取る。
がっちり凍り付いた氷は、それを長靴で踏みつけ割る快感。
今で言えば、プチプチの袋を破る楽しみにも似ていた・・・。