食憶(その9 歩道橋の午後3時)|長谷川潤一
2021-02-26
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やっと暇ができたので、大夕張に行って来ました。
ちょっと来ないとなんか寒々と広い感じがするなー、紅葉の季節も終わりだしなー・・ちょっとまてよ、おい!
何か変だと思ったら、あの歩道橋が無ーいー!。
鹿島小学校時代、みんなで渡り初めをした歩道橋。
冬の朝、誰も歩いた跡がない階段に一番乗りの長靴の跡をつけ喜んでいた歩道橋。
板で塞がれ、誰も渡らなくなったけど、うちの息子と尻滑りをして遊んだ雪の歩道橋。
とうとうお亡くなりになりました。
じつは、あの歩道橋は僕のオヤツタイムの特等席でした。くじ屋でいろんな駄菓子を仕入れては、あの歩道橋の一目高い所で、下々の暮らしぶりを見ながら食べる。という一味違った物理的な優越感というか、生活的な快感というか、それは美味しゅうございました。
マンボ、ニッキ、ゲソ珍味、宝引きイチゴ飴、黒糖パン、コリスガム、マル川、ラムネ、味噌パン、的飴、えびせん、水飴せんべい、ハッカ、野球チョコ・・・
これしか思い出せませんが、皆さんも忘れられない味のもの何かあるでしょう?
私、これを歩道橋の上でオヤツタイムしてました。
汽車の屋根が見え、足の下をバスや車が走り抜け、お風呂に行くお年寄り達や買い物篭を下げたお母さんたち、消防のおじさん達のホース巻き、緑町の長屋からはポヤポヤと煙突の煙、とても良い気分でした。
最後の渡り初め、ならぬ渡り終え?をして、その特等席で息子とオヤツタイムやりたかったです。
大夕張の最後の主、歩道橋さんに、合掌。
(2000年10月26日)