私の故郷遺産 | 松崎百合

16005

 何もかもが、ダムの下。

  

 地図から消えようとしている私の故郷大夕張。

  

 でも、私には、大事な、大切な、心の中に大夕張遺産があります。

  

 炭鉱が、閉鎖になる少し前に、私は内地へ転校しました。

  
  大夕張駅。

   

 蛍の光の曲に送られ・・・。

  

 母は近所のおばさんたちと抱き合って、泣いていました。

  

 私は、何時までも、友達と手を握り合い、離すことはできませんでした。

  

 でも汽車は待ってくれません。

  

 ベルの音と共に、少しずつ汽車は離れていきます。

  

 仲間は、線路の上を走りながら、汽車を追いかけてきました。

  

  

 元気で・・・さよなら、こんな辛い、悲しい、別れ。父を憎みました。

   

  

 でも私は忘れません。

  

 友の涙・・・おばさん達の涙、

  

 私の心の大切な遺産です。

松崎百合 旧姓 佐藤百合  

(2004年1月20日 記)


随想

1件のコメント

  • 中1の夏休みに入った頃か、家族が側にいたのか全く記憶にない。何故バスで離れることになったのかも?
    色々な人達が故郷を離れた。そして年を重ねると無性に懐かしさの余り思い出そうと。

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