ポンプ その3 | 高橋正朝 #49

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 鹿島東小学校の4年生だったか5年生だったか、ハッキリしないが、いずれにしても、冬のときです。

 家に誰もいないとき、ある実験をしました。   

 真空をつくる実験です。

    

 トリチェリーの真空なんて言葉は全く知らない。

 それなのに真空をつくった、というのは、私のボンクラな頭でその方法を思いつくわけがない。

    

 光文社のマンガ雑誌『 少年 』に載っていた、マンガ家、あさのりじ の科学実験をマネしたのだ。

 数ページの写真入りで、その実験が紹介されていた。

 

 一斗缶に水を20%ぐらい入れ、ストーブに乗せて水を沸騰させるのだ。 水をしばらく沸騰させたあと、栓にフタをし、一斗缶の胴体を水で冷やすと、一斗缶がクシャとなる。   

 それは、一斗缶の中が水蒸気で満たされ、一斗缶の胴体が冷やされることで水蒸気が液体となり、気体部分が何もなくなった、すなわち、真空となり、それで、大気の重さが一斗缶にかぶさり、それで、そのかぶさった大気の重量を支えきれない一斗缶が、クシャとなってしまった。

   

と、大意、上記のように説明してあった。

    

 その科学記事を読んでから、自分で実験をする機会をうかがっていた。 それで、家に誰もいなくなったとき、早速、やってみた。

  

 空の一斗缶は3つあった。 そのうちの1缶に、ヤカンで水を注ぎ、ストーブに乗せた。

  

 冬の大夕張である。 家の中を数メートル歩いて玄関の引き戸を開ければ雪だ。 玄関の戸を開けておき、水を5分ぐらい沸騰させてから、一斗缶の栓のフタをし、すぐに外に持ち出し、雪の上に置いた。 

  

 驚いたことに、一斗缶は、雪の上に置いた途端、クシャとなってしまった。

    

 あさのりじ は、その記事の1〜2年前ぐらいから、『 少年 』にマンガを載せていた。 そのマンガは、科学的な事実を挿入したりしていて、普通の SF マンガとは、趣きを異にしていた。

 

 あるとき、『 少年 』に、あさのりじ の紹介記事があり、どこかの大学を出ていることが書かれていた。 当時としては、大学出のマンガ家は珍しい。 その大学名は覚えていなかったので、ネットで検索したら、東京学芸大学となっていた。 卒業生は、学校の先生になるケースが多いようです。 

   

 『 光速エスパー 』というマンガがある。 松本零士 が描いたものは、『 集英社 』の『 少年ブック 』に連載されていたが、あさのりじ の『 光速エスパー 』は『 少年 』に連載されていた。

   

 その当時、東芝のマスコットキャラクターの『 光速エスパー 』は、あさのりじ の絵だ。

    

 今回のマンガ雑誌についての内容は、マンガ好きのあなたなら、知っていることでしょう ••••••。

    

 真空のことを少しだけだが、小学校の4年生か5年生に知ったわけだが、この時点では、ポンプと真空を結びつける発想は、まったく出てこなかった。 

(2021年7月17日 記)


 (筆者略歴)

 昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。


1件のコメント

  •  子ども時代に暮らした大夕張。
     外は寒さは強烈で、朝配達された牛乳瓶の中が凍っていて、シャリシャリになっていたことがよくあった。シャーベット状になった牛乳は格別おいしく感じた。
     その寒さは、屋外だけでなく、家の中も相当シバレ、朝起きると毛布の口もとのあたりが、白く凍りついていたことがあった。
     その寒さの中でよく寝ていたなあ、と思うが、当時の大人達はよくその環境の中で暮らしていたなあと思う。

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