位牌堂(地蔵堂)|内川准一
建物が無くなったはずの大夕張に、この春(2002年)まで、実はひとつの建物があった。
千歳町の火葬場に至る道路脇にあった位牌堂(地蔵堂)だ。
あったと言うのは、この春、雪の重みで倒壊してしまったから・・・
中に納められていた位牌2千7百は、散乱しないよう4体の地蔵と一緒に倒れた建物ごと、ビニールシートをかぶせられて、8月に至った。
このお堂は、願正寺の境内にあったが、この寺のものというわけでもなく、位牌もいろんな宗派のものが混在している。
先週の土曜、一日かけて、このお堂を撤去し、付近に工事用ハウスを設置して、散乱した位牌をこれに仮安置する作業が行われた。
作業をしたのは、地域の人若干と、市役所や建設部や寺の関係者など、30人ほどで、壊れなかった位牌約2千をハウス内の棚に並べた。
残り7百は箱に入れて収め、地蔵さんは元の場所に並べた。
これらの位牌の今後だが、4寺の話し合いにより「お焚き上げ」をして、近いうちに慰霊碑にするとのことである。
この中にどんな位牌が含まれているかの調査はされないこととなった。だから、どんな過去があったのかの確認はされていない。
昔を知る人もほとんどいない。
途中の話は省略する。
個人や市民団体へは、将来の管理の難しさから、譲るわけにはいかないとの結論になった。
大夕張に最後に残った建物が、位牌堂であったことに感慨を覚える。
位牌から、昭和20年代4歳以下で死んだ子が多かったことがわかる。
ある寺は、1寺だけで毎年150の葬式をしたという。
子供の死が多かったと。
戦地からの過酷な復員。栄養不足。小児麻痺。・・・。
大夕張に行くなら、時間はあまり残されていない。
ぜひ寄って、手にとって見て欲しい。
鍵はかかっていない。生きていたら、一緒に遊んだり、遊んでもらえたはずのやつらが一杯だ。
(2002年8月8日 記)