シューパロ川の灯籠流し|小野美音子
2021-08-17
2022-05-04
15800
お盆も過ぎシューパロ川に秋風が吹く頃となりました。
彼岸を渡った魂は、忘れ去られることを寂しがると聞きます。
私には麻疹の予防注射がもとで、赤ん坊の時に亡くなった兄がおり、毎年、妙法寺の灯籠流しに、参加しました。
まだ日の明るいうち、妙法寺には沢山の檀家の人々が集まり、お上人さんを先頭に、ぞろぞろとシューパロ川へ向けゆっくり歩きました。
川岸へ着き、手に持っていた灯籠を組立て、読経を聞いているうちに、あたりには夕闇がせまり、灯籠に蝋燭のあかりが灯されました。側にはお寺の跡取りの青年僧の国康さん(沖喜久恵先生の弟)がいらして、幼い私に、
「このあかりは亡くなったお兄ちゃんの所に届くのだよ」
と言ってくれました。
私には、掌に乗る小さな骨箱の兄しか知らず、不思議な気がしました。
やがて無数にも見える灯籠が、後から後から流され、その幻想的な美しさに息を飲みました 。
この世で会うことのなかった兄のその名前は、漢字を変え、音の響きだけを残し、私と顔立ちの似ている次男に付けられました。
兄の魂は、私の家に遊びに来ると、自分の名が色々な調子で呼ばれ、賑やかな思いをしながら、息子の成長を見守ってくれていると思います。
父は栃木出身で末子の上、単身北海道。
母は、岩見沢志文に実家の墓があった。
家に仏壇もなく、お盆は先祖を弔うという意識は少なかった気がする。
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大夕張で行なわれていたこの行事も当時は知らなかった。