「約束」と私のカエデの原風景 |小野美音子

19873

 北海道はしんとした静かな雪景色のようですね。

 
 雪の少ない地にいる私には、懐かしい風景です。

 

 緑ヶ丘の私の家は、左手に教会への坂、鹿島小の旧体育館。

 右手は泉町や宝の沢、対岸には岳富町付近を通る汽車や、錦町の炭住が見渡せ、大夕張としては素晴らしい眺望に恵まれていました。

 
 ただ、家が崖っぷちにあったので崖が崩れたら・・・とひそかに怖れたこともありました。

 ひどい嵐の日、私の不安を和らげるように父が

 

 「この崖の木は根が深く、しっかり守っているから大丈夫。」


と言いました。

 そこで私は崖で一番大きなカエデの木を思い出し、私の守りの木にしました。

 

 あれから数十年、あの楓はまだ生き永らえているのだろうか?

 
 水に沈む時に息絶えるのだろうか・・・? と気になっていたところへ、歌子さんの送って下さった沢山の写真の中に、その崖を降り、宝の沢から緑ヶ丘を見上げたものがありました。

 
 ・・あっ、この木かもしれない!・・

 

 と思い顔がほころびました。

 

 

 人は原風景に出会うと何か懐かしく、温かな幸福感に包まれます。

 

 
 夕輝文敏さんの「約束」の中の風景にも同じものを感じました。

 
 白い雪の大地と月明かりの中に、凛と立つ鹿島小の校舎。

 
 描きだされている少年少女の姿は生きる喜びをもたらします。

 
 ノーベル賞作家がTVで、「これからは少年少女の作品を書きたい・・」と話された時、夕輝さんとまるで呼応していたようにも思えました。

 
 札幌文壇も席捲なさっているとお聞きしていますが、大人になってしまった少年少女や、なりきれてない大夕張の少年少女達のために、これからも夕輝さんの心温まる作品を楽しみにお待ちしています。

 

 

(2001年12月9日 記)


随想

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