大夕張つれづれ■目には目を■|高橋正朝 #37
イスラム世界を舞台にした漫画を初めて読んだのは、鹿島東小学校2年生のときだった。
同じ明石町番外地に住んでいた同学年の、記内清司さんの家に行ったとき、 秋田書店の冒険王があり、その雑誌に福島鉄次の「 沙漠の魔王 」という絵物語が載っていた。
その絵物語は全ページ色つきである。
主人公は、魔王という呼称にふさわしい出立ちだった。
その絵物語は、数年前に、秋田書店から復刻版が出版されている。
その絵物語の連載が終わってから数年たって、昭和30年に、光文社の「少年」に、川内康範原作で、堀江卓の漫画による「 太陽仮面 」というのがあった。ウエブでチェックしたら、8か月の連載だったようだ。
この連載は断片的に読んでいるが、コスチュームがイスラム式だったので、 この漫画の題名を「 アラーの使者 」と勘違いしていた。「 アラーの使者 」は、やはり川内康範原作で、マンガは九里一平、たしか同年に冒険王で連載を始めている。
千葉真一が主人公を演じたテレビ映画にもなっている。この漫画の連載も断片的に読んでいた記憶があるが、川内康範・堀江卓の漫画の題名と長らく混同していた。
小学校6年生ぐらいの漫画だ。この頃に、「 目には目、歯には歯 」というフレーズを知ったように思う。
本来はハムラビ法典からのものだというのは、鹿島中学校の歴史の授業にでてきた内容だ。
この応報刑主義が、イスラム教にも色濃く引き継がれている。
リビアにいたとき、800キロメートルの沙漠を縦断したときがあった。運転手と私で、4輪駆動車を交代で運転をしていた。運転手が運転していたとき、 前輪がパンクして車が横転した。
沙漠の砂地に入る前の、まだアスファルト道路だったのだが、ハンドルをとられ、道路わきになだれ込み、車のシャフトはヘの字に曲がってしまった。4輪駆動のその車のガソリンタンクは80リットル入るが、そこの道路は何回も通っていたので、その事故った地点での車のガソリンタンクは、ほぼ空だったのは分かっている。
しかし、20リットルのポータブルガソリンタンク7個を車の後部に積んでいた。すなわち、140リットルものガソリンがあったので、火災による爆発が頭によぎった。
車が横転したとき、運転手側の側面が地面に倒れ、助手席に乗っていた私はすぐに車から出た。運転手が助手席側のドアから出てくるのに少々手間取ったが、2~3分後に車から出てきたので、何とか死亡は免れた。
車も火災は起こさなかった。2人とも運よく軽傷だった。
明け方の事故だったが、 四方八方から車が集まってきた。
沙漠地帯を移動するときは、太陽が出る2~3時間前から出発するのが普通で、しかも事故った地点は砂地に入る前のアスファルト道路だったから、10台ぐらいの車が集まった。そのうちの1台が、我々を50キロメートルぐらい離れた村に連れて行ってくれた。
運転手は、左手を2針縫っただけ。私は、フロントガラスが割れたのを浴びて顔が血だらけになったが、すべて浅い傷だった。
事故証明をとるために、そこの警察で事情説明をしたのだが、書類手続きが終わった後に恐ろしいことが待ち受けていた。アラビア語でやりとりしていたのだが、最後にきて何やら複雑なことを言ってきた。よく分からなかったので、 4~5回ぐらい会話を繰り返して理解できた。
警察署長が言うには、「 おまえの顔が傷だらけだ。おまえが望むなら、運転手の顔の同じ場所に傷をつけてやる 」
もちろん、 私はそんなことは望まない。
彼らは、通常はとても親切だ。
しかし、こういうときは、「 目には目を、歯には歯を 」の精神が鎌首を持ち上げてくるのだ。イスラム国家、すべてが「 目には目、歯には歯 」の応報刑をとっているわけではない。
トルコ、アルジェリア、サダムフセイン時代のイラクは世俗政党なので、法律が宗教的習慣を抑えようと努力している。しかし、何か事が起きると、「 目には目、歯には歯 」が出てくる。
だが、こういったことはキリスト教社会でも、現在においてもママ見られる。
高橋 正朝 ( たかはし まさとも ) 2014/05/22 _ 13:39:22
昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。