苛性ソーダと石けん その2 |高橋正朝 #57
鹿島東小学校の高学年のときの、授業で石けんをつくることが中止になったことは、前回書いた。
テレビで、石原裕次郎の撮影所での行動が映された番組があった。
撮影が終わった後、裕次郎が、風呂場で、髪の毛を固形石けんで洗っていた。 我々が子どもの時分は、髪の毛を洗うときも、普通の固形石けんだった。 シャンプーなんていうシロモノはなかった。 床屋の洗髪も固形石けんを用いていた。 美容院の洗髪はどうだったのだろうか。 やはり、固形石けんを使用していたのだろうと思うのだが ••••••。
浴場で、固形石けんで洗髪したとき、石けん液が目に入ると、かなりしみる。
この石けん液が目にしみるということを経験してても、それが苛性ソーダに起因していることに、まったく関連付けて考えることはなかった。 マ、当時の小学生だから仕方がない。 今の小学生なら、もっと知識は豊富だろう。
石けん液が目に入るとしみるが、浴場であるから、湯や水は豊富にある。 目にジャブジャブと湯や水をかけて洗い流せば、すぐに異常は消える。
目に石けん液が入った場合、こういうふうにすることは、実に簡単な、いわば、常識的な行動だと思うのだが、実際の事故現場で起きると、パニクるようである。
あるメーカーで働いていた男性半導体研究責任者から直に聞いた話だが、研究室で、女性研究員が作業を誤り、自分の目が硫酸の飛沫を浴びたらしい。
本人と周りにいた女性たちが慌て、どうしょう、どうしょうと騒ぎ、そのうちの1人が、責任者に報せ、彼が駆けつけ、研究室に設備されている蒸留水の水道管の蛇口を開き、その蒸留水で、目を洗わせ、その後、眼科医のところに行かせて精密検査を受けさせた。
事故直後の対処が適切だったので、その女性研究員は、翌日から、通常に仕事をしたらしい。
石けんと硫酸の違いがあるものの、それらが目に入った場合、共通することは、すぐに洗浄するということだ。
石けん液が目に入ったらしみることは、我々は幼児のときから経験し、水や湯で洗い流せばいいことは、日常生活で普通に理解している。
しかし、硫酸が目に入るのは、非日常的なので、本人と周囲の人たちはパニクり、目を洗浄することに思いいたらなかったようである。
責任者が現場にきて、事故にあった当時者を洗眼させるのを目の当たりにして、初めて、こういうケースでは、洗眼すべきだと、実感したのではなかったろうか ••••••。
(2021年9月11日 記)
昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。
固形石けんでしたね・・・。
風呂場で、自分で洗おうとしていたのか、それとも母に髪を洗ってもらっていたのか・・・
最後に湯をかけて流すとき、目に水が入らないように、一生懸命固く目を閉じていた。
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忘れていたけど、思いだすとなんだか、そんな自分が懐かしくあの時代が愛おしい。