紅夕張嶽
2017年の1月に長谷川潤一さんがおくってくれた夕張岳の写真。
西日を受けて赤く輝く夕張岳の山々。遠い昔の人は、夕張岳に恐れと畏怖の感情を抱いたということも頷ける神秘的で神聖な姿に見えます。
自分が今住んでいるところは、札幌市でも山に近い方で、手稲山の麓に住んでいます。大夕張から祖父の家にお世話になったときから、ずっと手稲山を眺めて過ごしてきました。
先日亡くなられた大林宣彦監督の本の中に、海彦、山彦の話があります。
大林監督ご夫妻は、生涯、監督とプロデューサーの関係で二人三脚で長年お仕事をされてきました。その中で、お互いの気質を海彦、山彦の気質に分類をしています。瀬戸内海の尾道で生まれ育った監督は、海彦。秋田の山の中で育った恭子婦人は、山彦。
海彦的気質とは、広大な海を目の前にして育ち、いつか大海原の向こう、見知らぬ世界にでていってやろうとする冒険心に富んだ心を育み、山彦的な気質とは、目の前に聳える高い山を見ながら育ち、あの山のてっぺん目指して頑張ろう、いつか頂上にたどり着こうという、目標達成のために努力を重ねる心を養う、そんな海彦的・山彦的気質は日本人の気質に通じる、というようなことが書かれていました。
自分が山彦的気質をもっているかどうかは別として、夕張岳の麓に育った自分は、山が見えないと落ち着きません。
私の家から見える、手稲山に夕陽は沈みます。でも、その対面に山はありません。だから山が陽を浴びて赤く染まる姿は、いつしか忘れてしまいました。
赤い夕張岳を思い出したのは、冬スキーに、子どもを連れて夕張のマウント・レースイに宿泊した時でした。午後3時頃だったでしょうか、陽が落ちるにつれ部屋の窓から見えるスキ-場が赤く染まっていきました。その時、夕張岳が赤く輝く姿をあらためて思い出したのです。
夕陽を受けて赤く輝く美しい夕張岳。夜のとばりが降りる、そのほんの少し前の一瞬に見せる姿。貴重な姿です。
「赤富士」と「紅富士」。富士山は、夏と冬に姿を赤く見せるといいます。私が知る赤い夕張岳は、冬の景色です。「紅の夕張岳」と呼ぶべきもでしょうか。赤く輝く夏の夕張岳の姿は、あるのか、どうなのか。記憶は例によってぼんやりです。
雪のない夕張岳が赤く染まる、『赤夕張嶽』の姿があったら、ぜひ見てみたいものです。