– 大夕張風物 – ダムと湖と三弦橋

20917

– 大夕張風物 – ダムと湖と三弦橋

大夕張 岳麓の里

画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄

はじめて大夕張へ来る人には、南大夕張から汽車に乗せるとよい。

列車は深い谷沿いにゆっくり走りトンネルにはいる。やがて視界がひらけ、右側に大きな湖と,赤い三弦橋が湖をまたいでいるのを見る。

この美しさは、バスで来たのでは感じられない。川をせき止めて造ったシューパロ湖,富良野芦別道立公園の一角である。

ダムは農業用水,発電用に昭和29年12月に着工、7年4ヵ月かかって完成した。高さ67メートル,長さ251,7メートル,総工費43億7800万円。内部にはエレベーターがあり,いくつもの通路が走っている。発電量は最大14,700キロワット,かんがいされる水田は11,518ヘクタール。三弦橋は,かつて営林署が材木を搬出した鉄橋である。

古くから住んでいる人たちは、ダムの付近を箱岩と呼ぶ。両岸の岩が,川底まで切りたって、深い淵をつくっていた。粗末な吊り橋が、その上にかかっていた。

シューパロとパンケモユーパロの二つの川の合流点で、豊富な水が箱岩に落ち込んで、神秘な形をつくっていた。

「箱岩には主(ぬし)が住んでいる。白金から流れてきた金塊がある」と言われてもいた。

ダム工事は神秘のベールをはがした。

金塊も主の話も聞かない。

だが,静かな湖水は,また新しい伝説を育ててゆく。

 

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