– 大夕張風物 – 春を呼ぶ福寿草
2020-02-16
2023-05-17
31798
画・・・・伊 藤 清 治
文・・・・佐 藤 貞 雄
4月、南からの暖かい風が吹く日がつづくと、積み重ねられた雪は日ごとに低くなる。ところどころに、約半年ぶりに土が現れると,まっ先に咲くのが福寿草(フクジュソウ)である。南向きで陽当たりのよい山の斜面に、落ち葉を押し分けて、黄色いつぼみが、ちょっぴり顔を出す。花ことばには出ていないが、幸福で長生きする草、または幸せを招く花ともいわれている。
キンポウゲ科、耐寒性多年草で一重咲き、ナデシコ咲き、三段咲きの品種がある。日本の北国に自生するほか朝鮮、中国東北部(旧満州)、東シベリヤなどに分布している。江戸時代には盆栽に添植されて床の間に飾られ、当時は元日草と呼ばれていたという。漢方医は、根にある強心配糖体サイマリンをとり出して心臓の薬にしているが、しろうとがそのまねをするのは危険である。
春を待ちかねた、やまの子供たちは、固い残雪をふみしめながら、土の香を求めて山はだを歩き回り、このつぼみを見つけると『オーイあったぞー』と仲間に呼びかける。手のツメを泥だらけにして掘りあげ、両手で包むようにして帰る。小鉢に植えておくと、人参(にんじん)に似た葉が出て、茎が10センチ位になると、黄色いかれんな花が咲く。畑に植えておくと翌年また花をつける。鰊を春告魚というが、福寿草は春を呼ぶ花ともいえよう。