– 大夕張風物 – 精炭ポケット

18028

– 大夕張風物 -精炭ポケット

大夕張 岳麓の里
精炭ポケット

画・・・・伊 藤 清 治
文・・・・佐 藤 貞 雄

4階建てほどの高い建物。うす暗いトンネルが2本、その下につづいている。貨車の列が、このトンネルから、石炭を積んで押し出されてくる。貨車のない、いっぽうのトンネルをのぞくと、水が雨だれのように落ちてくる。石炭が水洗いされたあとの水である。ひと口に積み込み場といわれる精炭ポケットで、石炭はここから汽車で、苫小牧と室蘭の港へ送り出されてゆく。

坑内から掘り出された石炭は原炭と呼び、選炭場で選別される。昭和の初期までは20~30人の選炭婦が、かすりの着物に赤い前かけ姿で、ジンマーから選別ベルトへ流れてくる原炭を、手でズリと石炭に選り分けていた。

選別された石炭はクラッシャーで、一定の大きさに砕かれて水洗機に回され、さらに『上部』と呼ぶ精炭ポケットへ運ばれる。いまでは直径2,8メートルのブラッド・フォード・ブレーカーと呼ぶドラムに原炭を入れ、回転させて、石炭と石のこわれ方の違いを利用して、選別と破砕を一度で行ない、水洗して上部へ送る。ここは大きな貯炭ポケットがずらりとならび、精選された石炭が、ベルトで送りこまれてくる。

1回に3台の積込みが行われるが、見ているうちに30トン車がいっぱいになる。何百人の手を経た石炭がはじめて商品として完成する。積み出される石炭の多さが、やまの繁栄を裏付けてゆく。

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