夕輝文敏さんのこと |飯田雅人

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 『ふるさと大夕張』の掲示板で、当時「大夕張文壇の至宝」とまで言われ、読む人を楽しませてくれていた夕輝文敏さん。

 

 初投稿以来数多くの作品で、故郷をとおして、忘れていた気持ちを思いだし、心をあたたかくさせてくれた。

 2021年8月21日に掲載された、『迎え人』が最新作。

 

 久しぶりの新作、これを機会に私が知るところの作者の夕輝さんについて、紹介したいと思う。

 

 

 夕輝さんは、言う。

 『ふるさと大夕張』との出会い。そのおかげで、当時は、大夕張をテーマに、家族に囲まれた、にぎやかな食卓テーブルの上で、ひたむきに物語を書いていた。

 

 そんな時間が、今思えば、とても幸せだったと。

 

 故郷大夕張の喪失は、どうしようもない大きなエネルギーで、物書きの心を揺り動かした。

 

 夕輝文敏さんは、昭和29年の栄町に生まれた。

 

 鹿島小学校、鹿島中学校、夕張東高等学校と進み、昭和47年に高校卒業と同時に札幌に移住し、就職。

 

 見聞を広めるため、日本を出て海外を旅した。

 ヨーロッパを巡る旅で、知り合った奥さんと結婚。

 

 結婚後は、仕事の関係で道内を転勤してまわる。

 

 現在は、定年退職で、長かった単身生活も終えた。

 住み慣れた札幌で、仕事も再雇用で継続している。

 望まれる限りは、体の続く限り働き続けていたいという。

 

 家では、奥さんと、二匹のかわいいウサギたちと暮らす。

  

 子どもの頃、大夕張の町を自転車で走り回った脚力を生かし、今でも、週末には長距離を走って体を鍛えているそうだ。

  

 20代後半から、小説を書き始めた。

 若い頃から、懸賞小説などへの投稿はしていたらしい。

 努力が実り、平成13年(2001年)に応募した『雪あかりの道』で「さっぽろ市民文芸NO.18」の選評に取り上げらた。

 平成23年(2011年)には、『路面電車に揺られて』で「さっぽろ市民文芸NO.28』の奨励賞を受賞し、表彰されるという結果を得た。

 

 以下に簡単に年譜を記す。

 


 

【作品年譜】

平成9年(1997年)

・『夢見地区金田屋食堂』ふるさと大夕張初投稿作品。

平成10年(1998年)

・故郷を離れた同級生たちの友情をテーマにした『もう一度・あの海で

平成11年(1999年)

・健保会館前を舞台に、幻想的な『朝方の夢』をふるさと大夕張掲示板に掲載。

平成12年(2000年)

・SNSがなかった頃、インターネット上の掲示板を通して知り合った人々が、オフラインで集い交流する様子を題材にした『イタヤカエデの木の下で

 

・炭砿の町に生きる家族の愛、親子の愛を描き、読む人の胸を熱くするファンタジー『イリュージョン大晦日の奇跡

 

平成13年(2001年)

・『イリュージョン大晦日の奇跡』を下敷きにした小説「雪明かりの道」を『さっぽろ市民文芸NO.18』に、応募。

 応募小説全作品35編中、9作に選ばれ、選評に取り上げられる。

 

 

・閉校になった鹿島小学校最後の在校生を題材に、喪失する大夕張の誇りを描いた『約束

 

 

平成14年(2002年)

・『海岸列車の女』幼なじみの二人の、せつない物語り。

 

平成15年(2003年)

・『赤いポスト』 病に伏した老郵便局長の最後の願いをかなえる為に奮闘する兄妹の様子を描く。

 

平成16年(2004年)

・『バス停』 当時、『ふるさと大夕張』の掲示板で、年の瀬に実際に起きたある出来事をモチーフとして描かれた。主人公の年老いた父を巡る心を震わせるドラマ。

  

平成18年(2007年)

・『希望』 突然の病魔に、店をたたむことにした主人公が、過去のつらい記憶の先に希望を見い出す物語。

  

平成21年(2009年) 

・西暦2050年、夕張岳の麓に新しい街ができる。大夕張のもう一つの未来を空想した『タイムカプセル』を『ふるさと大夕張』の掲示板に連載。(作者本人は、酔っ払いのほら話だと笑いながら語る)

 

平成23年(2011年)

・『路面電車に揺られて』、『さっぽろ市民文芸NO.28』に応募作品。

 小説部門で、奨励賞を受賞し表彰される。

 

 

 選評において、札幌在住の作家、編集者、朝倉賢氏は作品について、次のように書く。

 

・・・ 

 かつて札幌の交通機関の主役だった市電も今は一路線のみとなった。

 二人の娘も妻も外出先から戻らないクリスマスの夜、男は電車に乗って、少し疲れた心を癒そうとする。

 小学生だった娘二人と乗った思い出、赤提灯や石炭ストーブ。

 若い頃にいた炭坑と閉山による離散、初恋。

 そしてかつて住んでいた沿線の街並み。

 追想と現実の交錯が、札幌らしい小説に仕立てられている

・・・

 

令和3年(2021年)

・10年ぶりとなる『迎え人』を「ふるさと大夕張2丁目3番地」に発表(最新作)。

思い出を迎え入れれば、愛しきものたちはすぐそばにいる。喪われた故郷や家族にむける作者の愛情。

  


 

 作品づくりについて、快適なエアコンの効く書斎の机で構想を練るより、風呂に浸かっているときにアイディアが頭に降りてくるという。

 

 先の丸まった鉛筆を使って、チラシの裏紙に、一気に食卓で書き上げるのが、性に合っていると語る。

 

 

 次回作まで、作品に出会える喜びを楽しみにしつつ、のんびりと待っていたい。

 

 ※『路面電車に揺られて』について

 2022年8月、作者の夕輝さんにテキストを送っていただき公開することができるようになりました。

 この場を借りて御礼申し上げます。

 

 

 

(2021年07月12日記)

(2022年9月19日追記)

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