夕輝文敏 夕輝文敏さんのこと |飯田雅人 『ふるさと大夕張』の掲示板で、当時「大夕張文壇の至宝」とまで言われ、読む人を楽しませてくれていた夕輝文敏さん。 初投稿以来数多くの作品で、故郷をとおして、忘れていた気持ちを思いだし、心をあたたかくさせてくれた。 2021年8月21日に掲載された、『迎え人』が最新作。 久しぶりの新作、… 続きを読む
夕輝文敏 タイムカプセル |夕輝文敏 西暦2050年、夕張岳の麓に新しい街ができはじめた。 90年も前に、かつて炭鉱で栄えたように、再び原野に街ができた。 街の名は、大夕張と呼ばれていた。 2000年代前半、未曾有宇の原油高騰と地球環境問題が切迫する中、代替エネルギーとして、石炭が注目された。政府が夕張で試験的に進め… 続きを読む
夕輝文敏 希 望|夕輝文敏 十一月の冷たい雨が、歩道に散った落ち葉を濡らしていた。人通りの絶えた日曜日の夜、雨音だけが、シャッターを閉めた商店街を駆け抜けて行く。 眠りにつこうとしている通りの中、一軒の寿司屋には、まだ明りがついていた。 だが、暖簾は外されていた。 丸万寿しの大将、山越信明は、最後にもう一度と、長年… 続きを読む
夕輝文敏 バス停 |夕輝文敏 そこには、寝息を立てて横たわっている七二歳の父がいた。 ここが病院のベッドでなければ、まるで安らかに睡眠をとっているかのようであった。 屈強な体で、かつて石炭を掘り続けていた父が、今は病院のベッドの上で生死の境を彷徨っていた。 今朝方、父はスキー場の倉庫で意識不明の状態で発見された。… 続きを読む
夕輝文敏 赤いポスト|夕輝文敏 小学校の入学祝に何が欲しいかと聞くと 「おじいちゃんが郵便局長をやっていた大夕張へ行ってみたい。ねえ、いいでしょう」 と泰樹は言い出した。 泰樹が物心ついた頃は、幸一の父、杉沢忠勝は、すでにこの世の人ではなかった。 だが、幸一はまるで忠勝が生きているかのように 「おまえの、北海道の… 続きを読む
夕輝文敏 約 束|夕輝文敏 「いいか、今年のクリスマスは特別なんだ。明日の夜八時教室に集合だ。わかったな」 初の言葉に、正春も武も大きく頷いた。 年が明けて三月になると、三人の小学校は閉校となってしまう。 全校生徒十二名中五年生は初たち三名であった。 初たちが生まれる前に、この街を支えていた炭鉱が閉山となってしまった。… 続きを読む
夕輝文敏 イリュージョン /大晦日の奇跡|夕輝文敏 (目次) 路地裏目覚めサイレンの音父の背中年越しの夜葉 書 路地裏 隆一はその夜いつになく酔っていた。 同僚と別れた後、すぐにタクシーを拾おうとしたが、どれも満車であった。年の瀬のススキノは、人で混み合っていた。 隆一は仕方がなく、冷たい風に当たりながら、酔いを覚まそうと歩き出した。 しばら… 続きを読む
夕輝文敏 イタヤカエデの木の下で|夕輝文敏 (目次) 夢 出会い 再会 暑い日 交流会 メール お別れ会 病 一枚の絵 小さな命 イタヤカエデの木の下で 夢 ヒロは、校庭の端にあるブランコに乗っていた。 校庭の遥か彼方には、夕張岳がくっきりと映えていた。隣のブランコには、一七歳で病死した三浦由希が乗っていた。 二人の前を心地よい初… 続きを読む
夕輝文敏 もう一度・あの海で|夕輝文敏 (目次) メール心の高ぶり再会二〇年後の花火水平線夕陽理由(わけ)電話あの海で メール 「あの海で、二〇年振りに、俺たちの同窓会をやろう。 七月二八日、有珠の海で待っている。 リョウジ」 私は、メールを読みながら 「有珠の海、リョウジ」 と繰返していた。 そして、ウイスキーのグラスを… 続きを読む
夕輝文敏 夢見地区金田屋食堂|夕輝文敏 (目次) ナナカマドバス停柱の傷学生服のボタン再会吹雪の夜夢出発黄色い旗 ナナカマド 病院の帰り道、何気なく空を見上げると、ナナカマドの赤い実が目に入ってきた。 「この真冬の二月に、まだ実がついているなんて・・・」 今年の冬は雪が多く、何度も吹雪にも襲われている。なのに、ナナカマドの… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 バス停 希望 『夢の街』「バス停」「希望」 夕輝文敏さんの8、9作目です。物語に登場する札幌市の大通西三丁目のバス停は自分も14.5歳の時、月一位の割合で、大夕張ー札幌間の行来きに乗降したバス停であり、とても馴染みのある場所です。 私の母は、満87歳で昨年3月に亡くなりました。一昨年の夏に倒れてから、ずっと入院生… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 赤いポスト 『夢の街』 夕輝文敏さんの7作目、「赤いポスト」です。 大夕張に感じる濃密な人間関係は、時には重苦しく、息苦しい思いで、あの狭いヤマの中から逃げ出して自由になりたいという気持ちを抱かせるものなのだと。 子供だった自分でさえ、そう感じたこともあったと共感する部分があります。 『黄色い旗と思い出ノート』… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 海岸列車の女(ひと) 『夢の街』夕輝文敏さんの『ふるさと大夕張』6作品目です。これまでと趣を変え、ある日主人公が通勤の途中、列車に乗り込んできたミステリアスな女性との出会いから物語は始まります。 ・・・私は大林宣彦監督の映画『異人たちとの交流』、赤川次郎さんの小説『ふたり』、浅田次郎さんの小説『ぽっぽや』などがとても好き… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 約 束 『夢の街』 「約束」夕輝文敏さんの投稿5作品目です。 冒頭のシーンでは重松清の「カシオペアの丘で」にも通じる光景が浮かびます。最後の卒業生に向けての温かいメッセージに、夕輝さんの人柄や優しさがにじみ出ているような気がします。 「俺たちの学校が消えてしまうわけないだろう。俺たちが心の中でしっかりと覚え… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 イタヤカエデの木の下で 『夢の街』夕輝文敏さんの「イタヤカエデの木の下で」のpdf化です。 主人公たちの物語には、2000年前後の「ふるさと大夕張」を巡るエピソード的なことが織り込まれています。 読み返しながら、あらためてダムに沈もうとしていた当時の大夕張を取り巻く熱気、熱い想いを感じました。 三菱大夕張鉄道保存会等の保存… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 もう一度・あの海で 『夢の街』 夕輝文敏さんの二作目、「もう一度・あの海で」でした。 読みはじめて、物語の舞台が、再会の場所が意外にも有珠の海というところから始まりましたが、主人公のたちの濃密で永遠の友情は、大夕張という土地が育んだ物語でした。主人公たちの優しさに憧れてしまいます。 夕輝文敏さんとは、この間久しぶりにメ… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 夢見地区金田屋食堂 『夢の街』 「夢見地区金田屋食堂」出身者としては、言わずもがなの、鹿島地区池田屋食堂がその舞台です。作中、本間商店さんと思われるお店も登場します。 夕輝文敏さんが、寄稿された初めての作品です。ちなみに前回の『大晦日の奇跡』は、4作目でした。 ふるさとの暖かさにふれ、前向きに歩み始める主人公に、共感し… 続きを読む
1丁目1番地 夢の街 イリュージョン大晦日の奇跡 『夢の街』 夕輝文敏さんの『イリュージョン大晦日の奇跡』を更新しました。これまでの形式あらためてpdfファイル形式で掲載しています。夕輝さんを、私が知る限り紹介すると、2001年のさっぽろ市民文芸NO.18において小説「雪明りの道」で小説応募全作品35編中9作に選ばれ、選評に取り上げられました。 そ… 続きを読む