東野英治郎と西村晃の、吉良上野介と水戸黄門 | 高橋正朝 #88

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 前回 # 87 で、千年町にあった大夕張劇場て、水戸黄門を観たことに言及しました。

 水戸黄門に言及したついでに、大夕張とは何の関係もないが、黄門役をやった東野英治郎と西村晃に話しが跳びます。   

 黒澤明が、脚本に共同執筆者として加わり、監督をやった『 天国と地獄 』がある。

    

 この映画は、やはり、大夕張劇場で上映した。

 ウィキペディアで検索してみたら、大都市での初公開は、1963年3月1日となっている。

    

 大夕張劇場で上映したのはいつ頃かは覚えていない。 広告のポスターと写真が、劇場の外のガラス張りのケースの中に張り出されていたのを見ただけで、映画そのものは観ていなかった。

    

 この広告を見たとき、疑問がひとつだけ湧いた。 ポスターはカラーなのに、映画のシーンから切りとった数枚の写真は、モノクロだったことだ。 映画は、すでに総天然色の時代だったが、この映画はシロクロ映画なのかなぁ ••••••と思った。

  

 当時の黒澤明は、総天然色映画ではなく、モノクロ映画に固執していたのを、後年、何かの雑誌で読んだことがある。   

 この『 天国と地獄 』は、東京にきてから観た。

    

 誘拐犯人は、身代金を取った後、身代金が入っていたバッグを焼却するだろうと想定した警察側は、バッグに薬剤を仕込む。

 バッグは焼却され、焼却炉から立ち昇った紫紅色の煙の部分だけが、カラーだったアノ映画です。

    

 ここは見事な演出だった。

    

 ただし、映画の最後の部分で、山崎努が演じた犯人は、世の不条理を10分ぐらい言い続けるのだが、このシーンには、何の感興もわかなかった。

    

 この映画では、東野英治郎は、ナショナルシューズのベテランの職工役、西村晃は、債権者役で出演していた。

    

 職工役の東野英治郎は、随分と老けてみえた。 後に観た、大映の『 白い巨塔 』では、浪速大学の第1外科部長を演じていた。

    

 東野英治郎は、俳優座創立に関わった大幹部だ、ということを、後に、映画雑誌で知った。 老けて見えるが名優だ。

    

 西村晃が出演していたモノを初めて見たのは、NHK 大河ドラマ、『 赤穂浪士 』だった。

 すでに、我が家は札幌に引っ越していた。

 柳沢出羽守の間者、相沢新兵衛に扮した浪人姿の、西村晃の画面を見て、母親が、「 この人は、札幌の出身なんだよね 」と言っていたのを覚えている。

    

 東野英治郎の吉良上野介は、憎々しげな演技がうまかった。

    

 西村晃の吉良上野介は観ていない。

   

 この2人が、後に、勧善懲悪のテレビドラマ、水戸黄門役をするとは想像すらしなかった。

    

 ネットをみると、赤穂浪士を扱っていても、吉良上野介を登場させないケースもあるようだ。

    

 憎々しげな、吉良上野介を演ずる役者が少ないためらしい。

    

 我々が大夕張で過ごした少年時代、マンガ雑誌の読みもの記事には、吉良上野介は、領地では、実は名君だったという解説がすでにあった。

    

 忠臣蔵は、事実の一部分を素材にした創作モノだから、敵役の吉良上野介は、憎々しげなほうが、ストーリーとしては面白いのだろう。

   

(2022年4月23日 記) 


 (筆者略歴)

 昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。以後、仕事の関係で海外で長く生活。現在は、タイ、バンコクで暮らす。



   

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