食憶(その3 「へ」の字)|長谷川潤一

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 初雪、初氷、夕張岳にも白い雪が・・という時期になると思い出すものは何か?

 そうです、漬け物です!

 紅葉が進むと、あちこちの長屋の壁や洗濯物の物干し竿に、ずらーっと掛かっていたダイコンです。

 縄で一本ずつ丁寧に縛られて、長屋の間にユラユラ、ブーラブラと山間の早い西日の中で揺れていました。

 それぞれの家の味で干し具合が違っていて、「へ」の字干しは後からプリプリの食感で、飯時の大盛りおかず沢庵に、カタカナの「へ」の字干しは、皺が入った歯触りの良いオールラウンド。

 「の」の字干しまでくると、強靱な繊維感の旨味オンリーで、焼酎にベストの酒の肴「しないおごっこ」にと。

 その他にも、丸ダイコンやカブ、キャベツに白菜、ナスにウリ、真っ赤な南蛮、糠漬けに粕漬け、鰊漬けに鉞漬けなどなど思い出しますねー。

 人工甘味料なんのその!

 サッカリンに黄色6号、砂糖まぶして味の素!

 
 お茶請けなのに、丼大盛りでしたねー、ご近所同士でばくって食べたりしました。

 代々木アパートだったもんで、北向きの階段の踊り場は、絶好の漬け物置き場でした。発酵した漬け物の臭いがプーンと溜まり、シバレがきつくなると漬け物石で氷を割って漬け物出しをしましたよね。

 シャーベット入り状態のタクアンなどや、シャリシャリの汁ごとの鰊漬けなど、煙突まで真っ赤に焚いたストーブのそばで、冷たいやら熱いやら、ボリボリ、ガリガリ食べませんでしたか?・・・

(1999年10月21日)


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