大夕張つれづれ■スリの手口■|高橋正朝 #32

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 一昨日の日曜日に、BTS( 高架鉄道 )のプロンポンという場所に行きました。この駅の近くに日系のスーパーがあり、それが呼び水となって、この近辺に日本語書店や古本屋、居酒屋、ラーメン屋などが並んでいます。

 スーパーに行くために、駅から続いている歩道橋の手すり側を歩いているとき、後ろから誰かが私と手すりの間を通ろうとする感じで、私の右側に重量を感じました。?という感じで後ろを振り向いたら、タイ人らしき男が、私のポシェットに手をかけているではありませんか。

 私がニヤッと笑ったら、彼もニヤッとして、直角方向の歩道橋の方へ去って行きました。タイに来て、初めて出遭ったスリでした。

 これだけ書くと、私は常に注意深くて、周りに用心をしているように思われますが、実はその正反対で、 しょっちゅうスリに狙われているタイプです。

 最初にスリに出会ったのは、マドリッドの地下鉄の駅構内でした。手口は古典的で、男がソフトクリームを私の背中に投げつけて駆け去り、そこに、別な男が寄ってきて、「向こうに水道があるから、そこで洗えばいい。そこに連れて行ってあげる」と親切そうに言いました。

 もし、その通りにすれば、水道で上着を脱いだら、その上着をひったくて逃げるわけです。背広やジャケットを着ている場合、たいてい、上着の内ポケットにサイフを入れてることが多いので、それで、上着を狙ってソフトクリームやケチャップを投げつけるわけです。

 そのときは私はその手にはひっかかりませんでした。次はパリで、ルーブル美術館のすぐ前の通りで、4、5歳の女の子が白っぽい紙を持ってチョコチョコと私に駆け寄ってきました。

 その紙の大きさは、タブロイド判ぐらいの大きさで、それを広げて見せたのですが、何も書かれていません。
 そこに、10歳ぐらいの姉らしい子供が寄ってきて、その子も同じように紙を広げました。何も書いていません。

 次いで、見た目はかなり年寄っぽい、多分その子らの母親らしき者が寄ってきて、やはり同じ行動をとりました。

 さすがに、 感の鈍い私でも、「この連中、スリだ」と判断して、走ってその場を逃れましたが、「バシッ!」と音がしたので振り返ると、何と私のバッグから既に手帳を抜き取っていたんですネ。

 スリにとっては何の価値もないものだから、すぐにその場で捨ててしまったわけです。
 しかし、私にとっては住所や電話番号を書き込んでいたものですからとても重要なものだったので、慌ててもどり、その手帳を拾いもどしました。

 ちょうど、そこを通りかかったマダムが、「アタンション」と私に注意をしていきました。英語の「attention」と同じで、映画字幕風にすれば、「気をつけなさい」ということです。

 この時も、実害はなかったものの、その後、クレジットカードや現金、荷物をそっくり盗まれたり、と色々ありました。

 これからもあるかもしれない。

 人種が違うけど、言葉も交わさないけど、私は相当マヌケに見えるようだ。彼ら彼女らの眼力は大したものだ。いちいち数えてはいないけど、スリに出遭った回数は、 優に百は超える。

 私個人での経験では、ヨーロッパでスリが多いのは、ギリシアとイタリアの大都市、つまり観光客が多い場所。

 フランスはパリでのスリが多い。

 スペインは、観光都市が多いので、これまた油断がならない。

 ドイツから北になると、スリが少ないようだ。しかし、フィンランドのヘルシンキの中央駅のゴミ入れにサイフが投げ込まれていたの見たことがあったので、スリがゼロということではないようだ。

 男性心理をうまく衝いたスリの手口に出くわしたことがある。

 ミラノに最初に着いた日、安宿を決め、午後3時ごろだったと思うが、緯度が高くて夏なので、太陽はまだ中天。賑やかそうな場所の検討をつけてその方向に歩き始めた。

 30分ぐらい歩くと変形十字路にきて、 信号が赤なのを見ながら周りをキョロキョロしたら、向こうに黒髪の17,8歳ぐらいの少女が立っていた。

 「 お、可愛いな 」と思った途端、5~6歳ぐらいの男の子ばかり5人ぐらいに取り囲まれ、ポケットやバッグに一斉に手を突っ込んできた。慌てて、すぐ前の喫茶店に飛び込んだ。バッグをチェックしたところ、被害はなかった。

 ときどき、店の中をのぞいていたスリも、とうとう諦めてしまい、どこかに行ってしまった。  
 その喫茶店には、小1時間ぐらいコーヒーとアイスクリームを食べながら文庫本を読んで時間をつぶし、用心しながら店を出て町の中にで行きました。

 その日、安宿に戻ってきたのは夜の8時ぐらい。とはいっても、外はまだ明るい。その宿の1階はバーになっていたので、その外の席でビールを飲みながら文庫本を読んで、10時に寝てしまった。被害は全くなかったので、 スリのことは全く記憶から飛んでしまった。

 翌日、安宿を出たところで、昨日はあっちの方に行ったから、今日はこっちの方に行ってみよう、と歩き始めた。

 30分ぐらい歩いたら、道路が6本ぐらい集まった交差点にきた。

 向こうをみたら、若い金髪の魅力的な女性が立っている。

「オッ、美人だな 」と思ったら、5~6歳ぐらいの男の子が、7~8人寄ってきた。すぐに気づいて、彼らが私に触れる前に一目散に逃げた。

 初日には気づかなかったけど、こういう手なんですネ。男の微妙な心理を見透かした手口。こういう手口に出会ったのは、ミラノだけでしたが・・・・・・


高橋 正朝 ( たかはし まさとも ) 2014/04/22 _ 14:05:01

昭和23年11月に明石町生まれ。鹿島東小学校から鹿島中学校に進み、夕張工業高校の1年の3学期に札幌に一家で転住。


大夕張つれづれ

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